畳の大きさ
甲野 このあいだ工業デザイナーの秋岡芳夫先生をお訪ねしたとき、いろいろうかがいまして、面白かったのは、畳がなぜこの大きさなのかという話です。
甲野 あれは、織田信長が決めたとおっしゃるんです。つまり平時には敷いておいて、いざというときに持ち上げて盾にする。鉄砲玉がきたときの盾になるんです。身が隠れるだけの高さ、それと厚みが当時の火縄銃なら貫通しないということで、あの大きさを決めたんですね。
養老 鉛玉が通るか通らないかという。
甲野 ええ、だからちょうどそれが基準になっていて、いまもこの大きさだと。あれ重くて、上げたりするのがたいへんですよね。時代が変わったんだから、もうサイズを変えてもいいんじゃないかという話になったんですけど。こういうものって一度決まるとなかなか変わらないですね。
養老 そうですね。歴史も含めて文化的な産物というのが網の目みたいにつながり合っていて、ほぐすのがなかなか容易じゃない。だから、「総論すると、そうかんたんには言えないだろう」って話にかならずなっちゃうんですね。
甲野 たとえば「切羽詰まる」とか「鎬を削る」とか「太刀打ちできない」とかもそうですが、刀剣の用語から出てごくふつうに日本語のなかに入っている言葉があるんですけど、「切羽詰まる」の切羽が何かなんて、ほとんどの人は知らないですね。
養老 そういうのは、もうすでに言葉としての実感は完全になくなっているわけですね。
甲野 切羽というのは鍔を挟んでいる「座金」だし、鎬というのは刀身の部分の名称です。
養老孟司×甲野善紀『古武術の発見 日本人にとって「身体」とは何か』光文社2003年
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