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2007.04.03

t-PAと血管内治療

渡辺 脳卒中には「詰まる脳卒中」と「切れる脳卒中」の二つがあって、前者は「脳塞栓」「脳血栓」などの「脳梗塞」、後者には、「脳内出血」と「クモ膜下出血」などがあるというお話でした。まず、「詰まる脳卒中」の治療法から解説してください。

塩川 脳塞栓や脳血栓になると、20年ぐらい前までは良い薬がなかったので、手をこまねいて見ているしかありませんでした。状況が許せばすぐにバッと頭を開き、血管を切って血の塊を取る手術を行っていたこともありますが、時間もかかり、患者さんの手術による身体の負担も大きいことから、なかなか良い結果が得られませんでした。いまは血の塊を溶かす「t-PA」という非常に良く効く薬が開発されました。
渡辺 ほう。t-PAとはどんな薬ですか。
塩川 薬品名を「ティッシュ・プラスミノーゲン・アクチベータ」といいますが、血の塊を劇的に溶かす薬です。心筋梗塞(心臓の血管内に血栓ができて詰まる)の治療薬としては10年前から使われていますが、脳梗塞の治療法としては、ようやく一昨年の10月に認可されました。
渡辺 脳梗塞と診断された時点で、まずt-PAを使うわけですか。
塩川 脳梗塞で病院に担ぎ込まれてきた場合、発症3時間以内に治療が開始できればt-PAが有効です。
渡辺 発症から3時間以上経過している場合は、t-PAは投与できませんか?
塩川 そうです。脳は弱い臓器なので、発症後3時間以上経過すると回復の可能性が低くなるのでt-PAを投与しません。また発症3時間以内といっても、最初の症状が重くない人もいますから、発症時刻の見極めが難しいところです。しかも病院に到着して45分以内にさまざまな脳の検査を行いながら患者さんの体重測定や、年齢の確認、いつ脳梗塞が発症したのかなどの評価を済ませなければこの治療はできません。さらに、一定の危険を伴う治療ですから患者さん、あるいは家庭の方にt-PAを投与する同意を得なければなりません。いろいろ複雑な作業を、短時間でやらなければならないわけです。
渡辺 t-PAは副作用もかなり強い?
塩川 はい、t-PAは諸刃の剣ですのでさまざまな除外基準があります。たとえば、少し前に手術を受けたことがある人の場合は、この薬を投与すると手術部位から出血を起こす危険があるため投与できません。また、重症の脳梗塞の患者さんに投与すると脳内で大きな出血を起こして、手の施しようがなくなることもあります。ですから、脳梗塞の患者さん全体のなかで5%ぐらいの人しか、この薬の恩恵をこうむることができません。
渡辺 t-PAは静脈から点滴で入れるわけですね。
塩川 はい。通常は手や足の末梢の静脈から点滴します。
渡辺 脳卒中の治療法として、カテーテルを使った血管内治療もありますね。
塩川 足や腕の静脈からカテーテルを頭のなかまで入れて、そこから薬を投与して詰まっている血の塊を溶かす治療法を血管内治療、あるいは血栓溶解療法といいます。これは発症から6時間以内であれば行っていいというエビデンス(臨床例に基づいた証拠)があるので、発症から3時間まではt-PA、それ以降6時間までは血管内治療というのが原則です。

塩川芳昭(杏林大学医学部付属病院脳卒中センター脳神経外科)×渡辺淳一(作家)/[脳卒中編 その2]「梗塞」と「出血」薬で治すか、手術すべきか『週刊現代2007.4.14』

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